愛犬との生活を楽しむためのしつけや社会性
しつけ
監修:もみの木動物病院・獣医師 村田香織先生
人間と共生し、他の犬とも仲良く遊ぶためには、社会化期をどう過ごすかが大事です。生後3ヵ月くらいまでに、他者との関係性を学ぶ機会を積極的につくりましょう。子犬同士が遊びながら社会性を身につけられるパピークラスなど利用するとよいでしょう。
犬とお出かけするためのマナー
愛犬とドッグカフェへ行ったり、一緒に旅行を楽しむ人たちが増えています。お出かけ先で周囲に迷惑をかけぬよう、最低限のしつけができていることがマナーです。トイレがきちんとできる、おとなしく座っていられる、など基本的なしつけができたら、そうした場所へ連れて行きましょう。
お出かけの時に持っていくといいもの
- カフェマット(ステイマット)
- 犬用の飲み水
- エチケットウォーター(おしっこを洗い流すための水)
- 消臭マナーポーチ
- うんち袋
- トイレシート
- ウェットティッシュ
など
カフェなど排泄してもらうと困る場所や、動物病院などの不特定多数の犬が来る場所では「マナーウエア」(オムツ)の使用がおすすめです。
注意すべきこと
- ワクチン接種やノミ・マダニ予防を行いましょう。
- 抜け毛が多い犬種はブラッシングをしてから。抜け毛対策としてシャツを着せたりするのもおすすめ。
- 発情期のときは連れて行かないこと。
- 飼い主は楽しくても、犬にはストレスかも。様子をみて無理強いしないように。
社会化期に身につけておきたいこと
犬の性格は1歳頃までにおおよそ形成され、3歳くらいでほぼ安定すると言われています。動物が仲良く暮らすためのコミュニケーション能力を身につけやすい期間である社会化期は犬の場合生後3ヵ月ごろまでと言われ、この間に犬が人間と暮らす上で出会うさまざまな刺激に「楽しく」慣らしておくことが大切です。
特に、親戚、友人、子ども、近所の人など、よく家に来たり、散歩中に会ったりする人、動物病院の獣医師や動物看護師、トリマーなど犬にとって身近な人には、しっかり慣らしておきましょう。
また、自動車、バイク、電車、雷、花火などの大きな音にも慣らしておくとよいです。犬が恐怖症になってしまうのを防ぐ効果があります。
特に、これから飼い主さんとのスキンシップや、トリミング、爪切り、歯磨きなどのケアをきちんとしていく上でも「触られることを受け入れられる犬」に育てることが重要です。犬のいろいろな部分を触ったらごほうびをあげる、というように犬が「楽しい」トレーニングをしてあげましょう。
抱っこされることに慣らそう
赤ちゃんを抱っこして育てる人間は、かわいい犬を見ると当然のように抱っこしたくなります。しかし自然界では、動物が自分より大きなものに覆いかぶされるといえば、たいてい危険なとき。そのため、犬にとって抱っこは、本来「怖い」と感じることなのです。無理に抱っこして怖がらせないよう、フードなどを与えながら、安心させつつ抱っこに慣らしてあげましょう。
信頼していない人からいきなり抱っこされるだけだと、犬には怖いだけの「悪い経験」になってしまう場合も。まずは、信頼する飼い主さんから抱っこできるようにしていきます。ポイントは、好きなおやつをあげたり、おもちゃで一緒に遊んだりして安心感を与えてから抱っこをすること。抱っこをしたら必ずご褒美を与えるようにしましょう。そうすることで犬にとって抱っこが「よい経験」となり、たとえ知らない人からでも「抱っこ=よいこと」だと覚えて慣れていきますよ。
抱っこする人が立った状態で抱っこすると、犬にとっては自分の身長の何倍も高いところで抱っこされていることになります。椅子に座るなど安定した状態で抱っこして、抱っこした犬が暴れても高いところから落ちてケガをするというようなことがないようにしましょう。
ご褒美の使い方
人好きな犬に育てるには、「人と会うことが楽しい」と学習させるのが大切。いろいろな人にご褒美をもらう経験は効果があります。しかし、使い方を誤ると効果が薄れることも。
<誤った使い方>
外で出会った人が、犬の頭をなでるという流れはよくありますが、知らない人に触られるのは犬にとって本来は苦手なこと。これだけだと嫌なイメージだけが残ってしまいます。
<正しい使い方>
頭をなでてからご褒美をあげるのが、正しい流れ。「頭をなでられるとよいことがある、頭をなでられることはよいことだ」と学べます。なでると頭を引いてしまう犬には、ご褒美をあげながらなでましょう。
<注意点>
犬が指先を噛まないよう、ご褒美は手をパーの状態にしてあげます。お子さんの場合、犬が近づくと、とっさに手を引いてしまうことが多く、「獲物が逃げた」と思った犬が噛む恐れも。大人が手を添えるなど注意してあげましょう。
子犬のご褒美はドライフードを活用!
子犬の時期には、犬はたくさんのトレーニングが必要なので、ご褒美をあげる機会や量も増えます。とはいえ、ぐんぐん成長している犬の栄養バランスを崩してはいけません。もし固形物を食べられる犬なら、1粒ずつあげられるドライフード(総合栄養食)を活用しましょう。ドライフード(総合栄養食)ならば一粒ずつ与えられるし、子犬の成長にとって大切な栄養バランスを崩すことはありません。1日分の量を決めて容器に入れておき、その中から使うようにすると与えすぎを防げます。
<トレーニングとドライフードのあげ方の一例>
- 【朝】 1/4量を一緒に遊びながら与える。
- 【昼】 1/4量を身体中を触るトレーニングのご褒美で与える。
- 【夕方】1/4量をクレート(キャリー)トレーニング※のご褒美で与える。
- 【残り】1/4量を、トイレトレーニング、お出かけ、飼い主さん以外の人に慣れるなど、他のトレーニングのご褒美で与える。
- クレートトレーニング:移動に慣らしたり、犬がクレートのような狭く囲まれた場所でリラックスできるように教えること
子犬同士が遊びながら社会性を身につける場、「パピークラス」
動物病院やペットショップ、しつけ教室などでよく行っています。他の犬オーナーや病院スタッフらと触れ合うことで、人とのコミュニケーションが上手になります。オーナーもしつけのコツを教わったりすることで、オーナー同士のネットワークも広がります。